黄八丈を着るにあたって

黄八丈を着るにあたって

著:山下 芙美子


黄八丈と他の紬との違いは糸と染色にあります。艶やかさ、華やかさ、いろいろな場面でとても着やすいものです。
絵羽、無地等召されれば自信を持っていただけるものと思います。
帯次第で、いかようにも装うことのできる、とても重宝な着物です。

私事ですが、学校行事等に招かれることも多く、入学式には樺色を薄くした桜色の着物等、春を感じるものに。卒業式には ねずみの無地、白の変わり織りに袋帯を合わせます。又墓前祭等には前述のねずみの無地に塩瀬の帯等を合わせます。

柳悦孝1先生に、「毎日でも着たくなる黄八丈を作りなさい」と言われ、整経の都度、心掛けています。
お召しになる方の心が晴れやかになっていただけたら、出番の多い着物になると思います。

ただ、草木染は酸に弱く、果汁、汗等には十分お気をつけください。
万が一汚した場合は ひどくなければ、クリーニングではなく、仕立てたまま洗える「生洗い」がお薦めです。
シミになる程でしたら、呉服屋さんに相談の上、洗い張りに出してください。

三代以上もつと言われる黄八丈を長くお召しいただき、子、孫へと伝えていただけたらと思います。
私も祖母(めゆ)や母(八百子)のものを仕立て直して着ています。
洋服では味わえない持ち主の暖かさを感じることができます。
祖母の着物と羽織を使って孫の男子用の着物にしました。
帯に作り替えたり、二枚で一枚の着物にしたりと自分だけの一品に作り変え楽しんでいます。

島の子ども達にも一度は黄八丈に袖を通して欲しいと思い、中学校の授業で着付けをし、喜ばれています。三月のフリージア祭のキャラバンでは高校生にも着せて、都庁訪問等を行なっています。
島の外に出て、黄八丈の美しさに気付く子も多いので、少しでも着る機会を増やしていきたいと思います。
また、手持ちの黄八丈を着る機会を増やそうと、黄八丈を着て銀座を歩くイベント「黄八で銀座」を十年間行い、八丈島では「本場で黄八」を行いました。

  1. 染織家。柳宗悦の甥。元女子美術大学学長。1911-2003年 ↩︎

黄八丈コラム